今夜の対バンは大繁盛で、バンドのファンらしき女性が、薄暗い客席とライトアップされたステージの際で、席に座ったまま思い切り体を動かして音楽を聴いている。堀川丸太町からほど近い老舗のライブハウスの夜は中盤に差し掛かり、ベテランのロックバンドは客席を盛り上げる。
中央の丸テーブルに陣取って、彼女はずっと明日の朝5時に起きることを頭の片隅で考えながら、胸のかげりをごまかしていた。
彼と分け合って遠慮しながら飲む瓶ビールは、少しだけ居心地が悪く愛しい時間をくれる。二本目を注文して、そわそわした気持ちが少し落ち着く。
彼が順番にグラスに注いだ。彼女はお礼を言い、すぐに一口飲んだ。それがおいしくてもおいしくなくてもどちらでもよく、夢から覚めないように口に含んだ。
彼が楽しんでいるのかよくわからない。彼にもいろいろな付き合いがあるのだ。しかし、彼は9時に起きればよい。彼女はなんだか憎たらしく感じた。
ベースの重低音が足元から体中に響き、アルコールがのどを越していくごとに、胸の薄暗い痛みを少しだけ麻痺させていく。
ステージは絶えず熱気に満ちており、興味がないバンドの音楽が、ライブという魔法で魅惑的に聞こえてくる。パフォーマンスはすぐ目の前で今行われている。
彼女は彼の付き合いについてきて、時折未知のものに触れてみるのも悪くないと思っていた。音楽もライブハウスもそこで過ごす時間も愛しかった。この時間が明日を遅らせてくれることは絶対にないけれど、痛みを少しマイルドに変える力が、今この渦の中にあった。
そうやって、明日のことを繰り返し考えては重い胸が、ほんの少し和らぐ一瞬を求めながら、彼女は体中で音楽を聴く。またビールを口に含み、揺れるままに体を任せる。そうしていると一体に紛れて自分が消えてゆく気がした。
日常のずっと続いていく苦しみも、紛れて全部が混ざって、自分もこのライブの一部になれるような気がした。